fabo1996’s blog

映画 音楽

第3話 新しい自分

fourteen.hatenablog.jp

第2話はこちら

 

 

「ウチのジムに入会するなら月々3000円でいいですよ!入会金もいりません。

優君の影響で随分うちも商売させてもらってますので。」

 

僕はこの話を一旦持ち帰ることにした。

帰り際に会長から、

「今度優君の試合見に来なさい。そしたらきっと決心できるから。」

そういうとニコッとはにかんで店に戻っていった。

 

筋田の試合か、、、

確かに少しきになる。

 

僕は今まで格闘技なんて一切見たことがなかったから余計に好奇心が強くなっていった

 

次の日、学校で筋田に何気なく聞いてみた

「筋田って格闘技とかやんの?」

そう聞くと筋田は

「昨日ゴールデンジムいってきたろ〜? 

多分会長に聞いた通り俺は格闘技やらしてもらってるよ!」

 

筋田はいつもより胸を張って言ったように見えた。

 

僕はそんな筋田に憧れさえ抱き出していた

 

その日の帰り道ではもうほとんど決意は固まっていた

初めての興奮と夏の暑さのせいで心臓は踊り疲れていた

 

家に着くとすぐに筋田の試合日を調べた。

「今週の日曜日か」

場所はゴールデンジムでやるらしい

 

数ヶ月前の自分では想像もつかないことに興味を持っているなと

それだけで少し大人になれた気がしていた。

 

試合当日

 

「なんかこっちが緊張してきたなぁ」

会場に向かうにつれた鼓動が早くなって行った

もちろん筋田には試合を見に行くことは言っていない。

 

会場に着くとゴールデンジムの前で会長が待っていた

「おー!よく来たな!さっ中に入りな」

と会場まで案内してくれた。

 

ジムに入って奥の方に行くとやけに重厚な扉があった

「この先だよ」

会長に手招きされ重いドアを開けると

 

そこには大勢の人たちがとてつもない熱気で叫んでいた

 

会場の真ん中に丸いステージがあってそれを囲むように観客が座っていた。

「これが格闘技の会場か、、、」

正直異様な興奮の中に少し孤独感を感じ怖くもあった

 

真ん中のステージではすでに試合が行われていて

選手が殴りあうたびにに観客のボルテージが上がっていった

 

「この試合の次が優君の出番だからね」

会長にそう言われると一気に緊張した

 

そうこうしているうちにその試合が終わり

ため息と歓喜の歓声のなか

リズミカルな音楽とともに筋田は現れた

 

筋田が現れた瞬間会場のボルテージが最高潮になった

地面が揺れるほどの歓声

立っているだけで汗を掻くほどの熱気

何もかもが初めて感じたものだった

 

ステージに上がった筋田の表情はいつもとまるっきり違った

まるで今から出陣する武将のような気迫で

学校で見ている筋田とは別人のように見えた。

 

開始のゴングとともに筋田は前に出た

その光景をただただ見ていた

本気で殴りあう姿を見ていると体が熱くなった

今にも動き出しそうな自分の体を抑えしっかりと目に焼き付けた。

 

「すげぇ」

 

僕が試合中口にした言葉はそれだけだった

 

試合は圧勝で筋田が勝っていた

試合後観客に向けて拳を掲げている姿を見て僕はヒーローを見ているような感覚になっていた。

 

筋田の試合が終わると会長が横にきて

「な?すごいだろ?君もあんな風に戦えるようになるよ」

この試合をみた後に言われると説得力は絶大だった。

 

僕は今日試合を見させてもらったお礼を言うとすぐに会場を飛び出した

 

家に帰らずあてもなく走った

 

そうするしか今の感情を発散できなかったんだと思う。

 

しばらく走って落ち着いた時にはなんだか違う自分になった気がした

 

何者になったかはわからないけどとにかく今の自分が心地よかった

根拠のない自信と湧き出るエネルギーがしっくりきた

 

僕は背負っていたバックを開けた

 

そこから「ペンとノート」を取り出した

 

今までの人生これだけでに囚われていた

自分を信じてんじゃない、「ペンとノート」を信じてたんだ。

僕はこの道具を思いっきりぶん投げた

 

不思議と後悔はなかった

何より清々しかった

「今日からは新しい僕だ」

そう頷き家に向かった。

 

興奮冷めやらぬうちに夜を迎えた

 

格闘技について調べていた時だった、

知らない番号から電話がかかってきた

 

「だれだこんな時間に、、」

恐る恐る出てみると

「おい!筋田だ!」

なんだ筋田か、内心ホッとした

「どうしたんだよこんな時間に」

 

「お前試合見に来てたのか!?」

 

「ああ 言わなくて悪かったな!スゲェかっこよかったよ筋田君」

それを聞くと筋田は慌てた口調で

「お前絶対ここで格闘技やんなよ!!」

なぜそんなこと言うのかわからなかった

「なんでそんなこと言うんだ?

別にやるやらないは僕の勝手だろ?」

 

「うるせぇ!なんでもだ!今なら間に合う。

絶対にやるんじゃねぇぞ!」

 

そういうと筋田は電話を切った

 

 

僕は筋田の言っている意味がわからなかった。